「この資料、あの人がいないと作れないんです」
そんな言葉が、職場で当たり前になっていないでしょうか?
日々の仕事は、慣れた担当者に任せるほどスムーズに進むもの。
ただ、その人しか手順を知らない、ほかの社員では対応できないという状態が続くと、休暇や退職をきっかけに業務が滞ることもあります。
特に、限られた人数で仕事を回している小さな会社にとっては、見過ごせない問題です。
私自身、かつて100名規模の部署をマネジメントしていた頃、仕事を属人化させてしまい、反省した経験があります。
この記事では、実際の業務改善経験も交えながら、特定の担当者に頼りきらないための業務整理と、無理なく始められる仕組みづくりについてお伝えします。
特定の人しかできない仕事は、なぜ危険なのか

「あの仕事なら、○○さんに聞けば分かる」
職場でよくある会話ですが、その人以外は誰も手順を知らないとしたら、少し注意が必要です。
こうした状態は「業務の属人化」と呼ばれます。
担当者が普段どおり勤務している間は、特に問題を感じないかもしれません。むしろ、慣れた人が作業する方が早く、効率的に見えることもあるでしょう。
しかし、急な欠勤や退職が重なったらどうでしょうか。
必要な書類が作れない。お客様からの問い合わせに答えられない。どこに何のデータが保存されているのかも分からない。
中小企業庁の2025年版中小企業白書でも、属人化の解消によって、業務の標準化・効率化や、担当者の退職に伴うノウハウの喪失、業務停滞などのリスク防止が期待されると説明されています。
もちろん、担当者が専門知識や経験を持っていること自体は悪いことではありません。
問題なのは、その人がいなければ、ほかの誰も仕事を進められない状態になっていることです。
私自身も、仕事を属人化させてしまった経験があります
私自身、仕事の属人化によって、現場に負担をかけてしまった経験があります。
当時の失敗と、そこからどのように仕事の進め方を変えていったのか。少しお話ししたいと思います。
自分が休むと、現場の資料作成が止まっていた

以前、100名規模の部署をマネジメントしていた頃の話です。
現場作業員が使用する資料を作成する業務がありました。
大量にある商品番号から必要な情報を抜き出し、条件に応じて資料を整え、印刷する。いくつもの工程が必要な作業でしたが、その業務が私自身に依存していたのです。
普段は自分で対応していたため、大きな問題として意識できていませんでした。
ところが、私が休むと状況が変わります。
ほかの社員が資料を作ろうとしても、とんでもない時間がかかる。場合によっては、作成そのものを断念してしまうこともありました。
今振り返っても、これはマネジメントする立場として反省していることの一つです。
そのことを実感した経験でした。
Excelマクロと画像付きマニュアルで運用を変更

この状況を改善するため、途中から業務の進め方を変えることにしました。
取り組んだのは、Excelの関数やマクロを活用した仕組みづくりです。
商品番号から必要な情報を取り出し、条件分岐を選択して印刷するまで。パソコンが苦手な社員でも、複数の工程を進められるようにしました。
さらに、操作画面の画像を使った手順マニュアルも用意。
ただ、私自身がマクロに詳しかったわけではありません。むしろ、最初はほとんど分からない状態でした。
調べて、試して、うまく動かなければ修正する。その繰り返しです。
仕組みを完成させるまでには、かなりの時間がかかりました。
でも、その時間をかけたことで、後の業務はずいぶん楽になったのです。
そして、何より大きかった変化があります。
休みの日に、仕事の電話が鳴らなくなったこと。
これは本当に大きな変化でした。
自分がいなくても、ほかの社員が仕事を進められる。仕組みを整えることの価値を、身をもって感じた経験です。
小さな会社の業務整理は、繰り返す仕事から始めよう

では、実際に業務の属人化を減らすには、何から取り組めばよいのでしょうか。
いきなり新しいシステムを導入したり、難しいマクロを作ったりする必要はありません。
日常的に繰り返している仕事の中にこそ、簡素化できるチャンスがあります。
まずは、次の3つのステップから考えてみましょう。
① 日常的に繰り返している仕事を書き出す
最初に、普段どんな作業を繰り返しているのか整理します。
例えば、毎週の報告書作成、請求書の発行、注文内容の転記、問い合わせへの定型的な返信など。
その中で、次のような仕事はないでしょうか。
こうした業務は、改善を検討する入口になります。
最初から会社全体の仕事を洗い出そうとせず、まずは身近な作業を一つ選んでみることが大切です。
② 作業手順と判断するポイントを整理する
改善したい業務が決まったら、実際の作業を順番に書き出します。
何の情報が必要なのか。どの資料を確認するのか。条件によって対応が変わるところはあるのか。
普段は無意識に行っている判断も、できるだけ言葉にしてみましょう。
例えば、請求書の作成であれば、必要な情報の確認、金額の入力、内容のチェック、保存・送付までの流れを整理できます。
作業に慣れている人にとって当たり前のことでも、ほかの人には分からない場合があります。
③ テンプレートやマニュアルにまとめる
手順が整理できたら、繰り返し使える形にしていきます。
毎回同じ書類を作るなら入力用のテンプレートを用意する。操作が分かりにくければ、画面の画像を使ったマニュアルを作る。
チェック項目が多い業務なら、確認リストにまとめる方法もあります。
大切なのは、高度なツールを導入することではありません。
そこで迷うところや分かりにくい部分が見つかれば、少しずつ修正すればいいのです。
大切なのは、特定の人がいなくても仕事が進むこと
業務を整理するとき、最初から完璧なマニュアルや仕組みを目指す必要はありません。
大切なのは、一度作って終わりにせず、実際の仕事の中で使いながら整えていくことです。
私自身、Excelマクロによる仕組みづくりには苦労しました。それでも、改善後のことを振り返れば、取り組んでよかったと感じています。
一方で、すべての業務をマクロやシステムで自動化する必要もないでしょう。
簡単なチェックリストを作るだけで、誰かの負担が減ることもあります。共有フォルダの整理や、作業手順の統一から始められる場合もあるはずです。
小さな改善の積み重ねが、会社全体の働きやすさにつながっていきます。
まとめ|業務を整えることは、会社と働く人の両方を守ること
日常的に繰り返す仕事は、見直しのチャンスです。
特定の担当者しかできない業務があれば、まずは手順を書き出し、ほかの人でも対応できる方法を考えてみましょう。
仕組みを整えることは、会社の業務を止めないためだけではありません。
担当者が安心して休めること。急な不在があっても、周囲が慌てず対応できること。
そうした働きやすさにもつながると、私は考えています。
合同会社Barnetでは、小さな会社や個人事業主の皆さまに向けて、事務まわりの整理や業務の進め方を整えるお手伝いをしています。
「いつも同じ作業に時間がかかっている」「担当者しか分からない仕事を何とかしたい」
そんなお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。
